2023/05/13 10:57
こんにちは。手染め毛糸のPalettieです。
私は、酸性染料(以下、分かりやすくするために化学染料と表記します)を用いた染めと
草木染めの両方の仕上がりがもつそれぞれの良さにひかれて、両方の染めをしています。
化学染料で染めた毛糸は、パッションや躍動感、元気さに、
植物由来の染料で染めた毛糸は、穏やかな癒しにつながっていると思います。
どちらの方法で染めた毛糸も、見たり触れたりしていると、心の内側からこみあげてくる喜びのようなものがあります。
さて、今日は、もう既にご存じの方も多いとも思うのですが、
念のため、草木染めの毛糸の特徴や取り扱いのポイントについてまとめてみました。
また、このブログの後半には、草木染めについて、私が感じていることも載せています。
こちらは、長くなっていますので、お時間がありますときにでも、ご一読いただけたら幸いです。
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~草木染め毛糸の特徴~
草木染めの毛糸は、透明感、みずみずしさを持つと同時に、
多かれ少なかれ程度に違いがあるものの、化学染料で染めた毛糸よりも、時とともに色がゆるやかに変化しやすいという特徴があります。
全体的には、やわらかい色合いに変化していくことが多いです。
~草木染めの毛糸の色の変化をゆるやかにするための取り扱いのポイント~
草木染めの毛糸は、光の照射や、酸性・アルカリ性などの液体の付着で色に影響を受けやすい傾向があります。
その色の変化をゆるやかにするための具体的な対応方法としては...
・洗濯をするときは、中性洗剤を使用し、優しく手洗いをう。
・洗濯回数をなるべく減らす。とはいえ、汗やジュース等が付着した場合は、なるべく早めに洗濯を行う。
・洗濯回数が少なくてもかまわないものを作る場合に使う。
・日陰干しをする。
・着用しない間は、クローゼットなど遮光できる場所で保管する。
常時リビング等に飾っておくことをなるべく避ける。
等があげられます。
草木染めの毛糸を選んでいただくときの参考にしていただければと思います。
そして、ゆるやかに変化する草木染めも楽しんでいただけたら嬉しいです。
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草木染めについて私が感じていること・・・
私は、草木染めでは、自然の一部の抽出・転写を同時にさせてもらっていると思っています。
地球上で人よりも長く脈々とつながって存在してきている植物の一部を。
草木染めをしている間や、染色仕上がった毛糸を見る時、編むとき、身に着けるときも、自然となんだか穏やかな気持ちになります。
忙しい日常に緩やかな時間をもたらしてくれるような感覚があります。
草木染めで染めた毛糸は、少しずつ色がうつろうこともありますが、そんなところも、もともとの植物と似ているなと思います。
(※もちろん、草木染めで染めた毛糸は、時間の経過とともに色がゆるやかに優しく変化するものだけでなく、
中には、用いる染料となる植物や、染色方法によっては、やや濃い色になっていくものがあったり、そのまま、
あまり変わらないものもあります。
そして、色が優しい色合いに変化するものについても、染色方法によってその変化を極力抑える、もしくは、
より変化の少ない植物の力を借りて抑えるということもある程度可能です。
また、現在取り扱っている植物で染めた毛糸が一年後に白い毛糸に戻ってしまったというような経験はありません。)
さて、実は、私は、草木染めの毛糸に惹かれながらも、たまに、
化学染料で染めた毛糸だけを取り扱った方がよいのかな?ということに迷うことがあります。
草木染めの毛糸の色の時間による変化を極力抑えるようなアプローチはできるものの、
全く変化をしないようにすることはそのものの持つ性質上難しく、
それについて、化学染料と比較したときにその変化を好まない方もいるのではないか?と思うのです。
だとしたら、化学染料だけで染めた方がよいのかな?と。
草木染めの毛糸を手にしていただいた方に、より長くその色を親しんで楽しんでいただきたいという気持ちと
完全にそうできないこともあるという矛盾と葛藤。
変化することだけに焦点を当てるのであれば、酸性染料に軍配があがるのですが、
草木染の毛糸の存在感も楽しんでもらえたらなという矛盾と葛藤。
そんな中、以前、何十年も草木染めを行ってきた大先輩とお話をさせていただく機会がありました。
そのギャラリーに展示された草木染めの作品は、染色されている方のお人柄と重なり、
どれも優しく穏やかで、私はとても楽しい時間を過ごさせていただきました。
その時に、私は、その方が、草木染めは、日光(光)の照射や、洗濯等によって、それぞれの色変化があることも含めて、
草木染めの特徴を愛で、大切に草木染めを続けていらっしゃるということに気が付きました。
それと同時に、やはり、私も、草木染の糸の透明感や、それぞれの色が作り出すハーモニーの優しさに惹かれているから、
色がゆるやかに変化しても、いまだに草木染の毛糸にも惹かれているのだなということに気が付きました。
...変化しないことは、もしかすると、商品としては好ましいことかもしれないけれど、
ものも人も、みな、多かれ少なかれ、またそれぞれのスピードで変化していきます。
化学染料で染めたものは、色の経時変化が小さいものも多いですが、
化学染料で染めたものでも、染め方によっては、一度の洗濯でがらりと色が落ちるものもあります。
化学染料で染めたものは色の変化が小さいといっても、日常生活で使用する衣服として色を乗せているもの(繊維)自体も、
時間によって変化していくものが多いです。
繊維自体の黄ばみ、生地の傷みなども併せて、変化がないわけではありません。
ものは、使っていると、または、使い方によっても変化します。
メンテナンスや取り扱いに注意を払いながら大切に使っていくのが大切かもしれません。
(人も、永遠に赤ちゃんや子どものままでいることはなく、日に日に変化していきます。
こちらもメンテナンスや、健康に注意を払いながら生きていくのが大切です。
(人の場合の変化は、それらを成長と呼ぶのか、老い、熟成と呼ぶのか、はたまた、ニュートラルに変化と呼ぶのか...。))
変化を嫌なものと思うと、色の変化は耐えがたきかもしれません。
変化することが普通ととらえると、それはただ、そうであるということになるのかと思います。
そんな風に考えていると、だんだんどうするべきか?は曖昧にわからなくなっていきます。
もしかすると、この先にあるのは一つの正解ではなく、私はどうしたいのか?
毛糸を見ていただく方に何を楽しんでもらいたいのか?という気持ちと、
私はどうしていくのか?という覚悟、もしくは優先させるものをはっきりとさせることが必要なだけなのかもしれません。
もし、草木染めの素敵な部分を受け入れたいと思うのならば、他の特徴もあると知りつつまるごと取り入れるということになるのかと思います。私が、草木染めは、酸性染料で染めるよりも手間がかかるのにもかかわらず、そして、化学染料の方が色の変化がより小さいと知りつつも、草木染めも続けているということは、結局、そういうことなのかもしれません。もし、私の草木染めの毛糸について何かありましたらいつでも教えていただけたらと思います。真摯に受け止め、迷いながらも、その時にできるより好ましい方をご提案していけたらと思っています。
最近、百貨店、複合施設等の大きなお店でも、そのもののうつろいを楽しんでくださいとのメッセージとともに、草木染めの商品を見かけることが多くなりました。(もしかすると、そんな風に感じるのは、ただ単に、私が草木染めをする影響から、そういう広告やポップが目に付くだけかもしれませんが....、)草木染めの変化を肯定的にとらえていただいている人たちも増えているのだろうなと感じる一端でもありました。
...草木染めの毛糸を選んでいただいたとき、どうぞ、あなたの日常の中で変化する毛糸を楽しんでいただけますように。
※写真は、すべて草木染めの手染め毛糸(ソックヤーン)です。
