2023/07/04 11:00

いつもは、主に、羊毛と生分解性化学繊維(※)からなるソックヤーン(中細程度)を扱っておりますが、染めの面と作品になったときのケアの面での草木染との相性の良さから、「シルク」素材を含んだ毛糸がずっと気になっておりました。

シルク混毛糸を調べているうちに、シルクの持つ特性を活かしながら"特別な日はもちろん、折角なので、普段にも気軽に使えるもの"というイメージ等が膨らんできました。

そこで、約一年前位から、

①シルクの光沢も存分に楽しめる糸で、
②やや繊細で、かつ、ある程度の力強さもあり、
③家庭でも取り扱いが可能なもの

という視点で原糸を探し始めていました。


〈補足〉
①は、特別な日にも...という視点
②は、一綛で編める春夏秋頃の半袖やベストのニット(大きな編み目で重ね着用)をイメージしたため。特に、肩回りなどに大きめな透かし模様のあるデザインにも取り入れやすいように、バランスの取れた繊細さと力強さが必要だろうと考えたため。
③は、以前、家庭での取り扱い中に、シルクのケアで失敗した経験から。



少しずつ新しい糸に出合うたびに、糸の個性に感心し、今回は、以下の違いなどに注目していました。


・用いられる原料の違い
シルクの違いや混合する毛糸の種類の違い(種類の異なる羊、アルパカ、ヤギ・・・など)


・紡績会社の違い(会社の考え方、尊重することの違いは、扱う原料の違い、シルクと毛糸の混合比、糸の細さ、等の違いや、用いる製造工程や技術の違いにつながり、それらは、組成や糸としての基本データや価格などの数値や文字としては見えていない部分の違いにつながると考えました。実際に触れてみて気が付いたことが沢山あったので。)


これらの違いは、最終的に、目にした時、手にしたとき、編んだとき、身に付けたときに感じる違いにつながると感じました。




そして、各種様々な原糸に触れながら、いくつかの項目を比較してみました。どの糸も、それぞれ素敵なところが沢山。
特に光沢が素晴らしいもの、特に繊細でやわらかいもの、特にあたたかいもの、手触りの良いもの・・・。それぞれ、あんな作品やこんな作品になったら、きっと、素敵だなと想像できるものばかりでしたが、今回は、上記の3つの視点に的を当て、最終的に3つの候補にまで絞り、染め、スワッチ編みまで試してみました。


実は、この3つの候補の中の一つに、私の予想を越えていた(想像していなかった)嬉しい特性と、検討が必要な特性を同時に持つ糸があり・・・、最初は、本当のところ、どの糸をお迎えするのか?(とても気になるこの一つの糸をお迎えして本当にいいのか?)と、少し迷いました。


嬉しい特性は、見た目、手触り、肌触り等に関与しており、とてもワクワクしました。これは、きっと、上記のような作品を作りたいと感じている方のお役に立つのではないだろうか!?と感じたからです。反対に、検討が必要な特性は、染めや仕上げの作業性を困難にする特性で・・・、工程数が多く、時間と手間がかかる草木染めに、手作業で行う工程が増えそうな予感は、沢山染めることも困難そうで、果たして、私の自助努力でいつか吸収することが可能になるのか?という思いに、今の段階ではやや気持ちが二の足を踏み・・・、頭の中で色々考えたことを覚えています。


それでも、その糸は、シルクの機能と羊毛の機能が程よく混ざり合うことで、探していた視点において、お互いの魅力が発揮されているというワクワク感につながり、最終的に、今回は、この一つの糸に決めました。


それが、ShinyYarnの原糸です。こちらの糸は、レースウエイト(厳密には、極細と中細の間程度)で、ウォッシャブルメリノファインウールとシルクからなる糸になっています。


これまでが、ShinyYarnの原糸をお迎えするまでのお話です。


もちろん、探し始めた時点で、既に、①~③と限定的であるため、皆さんが編みたいと望まれる全ての作品において、その個性を発揮できないかもしれません。何と比較するかで強弱も変わってきます、お好みもあると思います。私が惹かれた点は、皆さんにとって本当に有効だったのかどうか、また、編んでみて気になった点なども、今後、皆さんにお聞き出来たら、とても幸いです。染色の過程で気になった改善点も考慮して、次回のステップにつなげられたらと思っています。



とても長くなってしまいましたので、今回はここまでにします。
最後まで、お読みいただきありがとうございました。


次回からは、シャイニーヤーンの特徴について、少しずつご紹介していきます。


※生分解性化学繊維とは、自然界に還ったときにときに、環境に影響のないレベルまで分解されうる化学繊維とされています。


・2023.7.6加筆修正